片頭痛とCGRP|予防の注射・点滴・飲み薬の治療を開設【福岡市中央区】
最終更新日:2026年10月9日更新(初回掲載:2021年8月21日)
福岡市中央区・大濠公園駅から徒歩約2分の大濠パーククリニックです。
片頭痛の治療は、2021年に日本でCGRPに働く抗体の注射薬が発売されてから、選択肢が大きく増えました。中心にあるのが「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」という物質です。この記事では、CGRPが片頭痛にどう関わるのか、そしてCGRPに働く注射・点滴・飲み薬と、ラスミジタンという薬について、一般の方向けにまとめます。いずれも医師の処方が必要な薬で、使えるかどうかは診察で判断します。当院では頭痛外来・女性頭痛外来を行っており、月経・妊娠・授乳・更年期など女性の体に関わる頭痛も、予約不要でご相談いただけます。
しくみ CGRPとは?片頭痛が起こるしくみ
片頭痛は、脳の血管のまわりの神経が関わる病気と考えられています。
- 何らかのきっかけで、脳を包む膜(硬膜)の血管のまわりにある三叉神経が刺激されます。
- 三叉神経の末端(終末)から、炎症を起こす物質であるCGRP(calcitonin gene-related peptide:カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が放出されます。
- CGRPが血管を広げ、まわりに炎症(神経原性炎症)を起こします。
- 痛みの信号が脳に伝わり、ズキズキする痛みや吐き気、光・音への過敏などが起こります。
片頭痛の発作中には血液中のCGRPが増えることが知られています。そこで「CGRPの働きを止める」ことを狙った薬が開発されました。片頭痛そのものについては片頭痛の症状と治療もご覧ください。
注射 抗CGRP関連抗体の注射(予防薬)
CGRPそのもの、またはCGRPの受け皿(受容体)にくっつき、CGRPが働けないようにする「抗体」の注射薬です。発作を起きにくくする予防薬で、皮下注射で使います。
- ガルカネズマブ(エムガルティ):CGRPにくっつきます。初回2本、その後は4週間に1回。
- フレマネズマブ(アジョビ):CGRPにくっつきます。4週間に1回、または12週間に1回(3本)。
- エレヌマブ(アイモビーグ):CGRPの受容体にくっつきます。4週間に1回。
日本では2021年に3剤とも発売され、保険診療で使えます。臨床試験では、片頭痛の日数を減らす効果が確かめられていますが、効果には個人差があり、すべての方に効くわけではありません。ただし保険で使うには、国の「最適使用推進ガイドライン」で、主に次のような条件が決められています。
- 片頭痛と診断され、治療開始前の3か月以上、片頭痛の日が月に平均4日以上ある
- 生活の工夫や発作時の薬を使っても、日常生活に支障がある
- 従来の予防薬(プロプラノロール、バルプロ酸、ロメリジンなど)で効果が不十分、副作用で続けられない、または体質や持病のため使えない
主な副作用は、注射した場所の痛み・赤み・かゆみなどです。まれに過敏症(アレルギー)が起こることがあります。効果の出方には個人差があり、一定期間使ったあとに効果を確かめて、続けるかどうかを判断します。予防薬全般については片頭痛予防にCGRP関連製剤、片頭痛予防薬の作用機序でも解説しています。
点滴 抗CGRP抗体の点滴(エプチネズマブ)
エプチネズマブ(ビエプチ)は、CGRPにくっつく抗体を点滴で投与する予防薬です。通常は12週間(約3か月)に1回、点滴で投与します。
日本では2026年9月16日に「片頭痛発作の発症抑制」の薬として承認されました。ただし、この記事の作成時点(2026年10月)では、薬価(保険の価格)の決定や発売の前の段階です。実際に保険診療で使えるようになる時期や費用は、まだ決まっていません。
飲み薬 飲み薬のCGRP受容体拮抗薬(ゲパント)
CGRPの受容体を、小さな分子でふさぐ飲み薬で、「ゲパント」と呼ばれます。日本では次の2剤が承認・発売されています(保険診療)。
- リメゲパント(ナルティークOD錠):2025年9月承認、同年12月発売。発作時の治療と予防の両方に使える、口の中で溶ける錠剤です。発作時は1回1錠、予防では1日おきに1錠飲みます(1日1錠まで)。
- アトゲパント(アクイプタ錠):2026年2月承認、同年4月発売。予防の薬で、1日1回飲みます。発作時の治療への適応は、現在申請中です。
血管を縮める作用はないとされています。主な副作用には、吐き気、便秘などがあります。まれに、発疹や息苦しさなどの過敏症(アレルギー)が、飲んで数日後に出ることもあります。予防で使う場合は、生活の工夫や発作時の治療をしても日常生活に支障がある方が対象です。
なお、ウブロゲパントなど、海外で使われていても日本では承認されていないゲパントもあります。
ラスミジタン ラスミジタン(レイボー)
ラスミジタン(レイボー錠)は、片頭痛の発作時に飲む薬です。日本では2022年1月に承認、6月に発売され、保険診療で処方できます。50mgと100mgの錠剤があります。
三叉神経にあるセロトニン5-HT1F受容体に働き、神経からCGRPなどの痛みの物質が出るのを抑えると考えられています。「ジタン系」と呼ばれ、トリプタンのような血管を縮める作用はほとんどないとされています。
一方で、脳の中にも働くため、めまい(ふらつき)、眠気、だるさ、しびれ感などの副作用が比較的多く出ます。服用後は、自動車の運転など危険を伴う機械の操作はしないでください。ふらつきによる転倒にも注意が必要です。予防薬ではないので、毎日飲む薬ではありません。
詳しくはレイボーは新しい片頭痛治療薬、レイボーの副作用対策をご覧ください。
比較表 治療薬の比較表
種類 | 主な薬(一般名) | 使い方・頻度 | 目的 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|---|
抗体の注射 | ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ | 皮下注射。4週間ごと(フレマネズマブは12週間ごとも可) | 予防 | 注射部位の反応、過敏症。保険では使用条件あり |
抗体の点滴 | エプチネズマブ | 点滴。12週間ごと | 予防 | 2026年9月承認、記事作成時点で発売前 |
ゲパント(飲み薬) | リメゲパント | 発作時に1錠/予防は1日おき | 発作時・予防 | 吐き気など、まれに過敏症 |
ゲパント(飲み薬) | アトゲパント | 1日1回 | 予防 | 吐き気・便秘など、まれに過敏症 |
ジタン系(飲み薬) | ラスミジタン | 発作時 | 発作時 | めまい・眠気。服用後の運転は不可 |
トリプタン(飲み薬・点鼻・注射) | スマトリプタンなど | 発作時 | 発作時 | 心臓・脳の血管の病気がある方は使えない |
トリプタン トリプタンとの違い
トリプタンは、片頭痛の発作時の治療で長く使われてきた薬です。セロトニン5-HT1B/1D受容体に働き、広がった血管を縮めるとともに、CGRPの放出を抑えます。飲み薬のほか、点鼻薬や注射もあります。
ただし血管を縮める作用があるため、狭心症・心筋梗塞や脳梗塞などがある方には使えません。一方、ラスミジタンやゲパントは血管を縮める作用がほとんどないとされ、こうした理由でトリプタンが使えない方の選択肢になることがあります。どの薬が合うかは、持病やほかの薬との飲み合わせを確認して決めます。
また、発作時の薬(市販の鎮痛薬を含む)を月に10日以上使う状態が続くと、かえって頭痛が増える薬物乱用頭痛につながることがあります。
対象 どんな方が対象になりますか?
- 片頭痛の発作が月に何回もあり、仕事や家事、学業に支障が出ている方
- 従来の予防薬で効果が不十分だった方、副作用で続けられなかった方
- 心臓や脳の血管の病気などで、トリプタンが使いにくい方
- 発作時の薬を飲む回数が増えている方
一方、妊娠中・授乳中の方や、妊娠を希望される方は、使える薬が限られます。妊娠中の片頭痛治療薬、授乳中の片頭痛治療薬もご参照のうえ、必ず医師にご相談ください。また、頭痛には緊張型頭痛などほかの種類もあり、まず正しい診断が大切です。
女性頭痛 女性頭痛外来|女性ホルモンと頭痛
当院では「女性頭痛外来」として、月経関連片頭痛(月経時片頭痛)、妊娠中・授乳中の頭痛、更年期の頭痛など、女性ホルモンの変動が関わる頭痛のご相談に対応しています。
女性ホルモンと片頭痛の関係
片頭痛は女性に多く、月経の前後に発作が起こりやすい方も少なくありません。女性ホルモンのひとつであるエストロゲンが急に低下することが、片頭痛の引き金の一つになると考えられています。月経開始の2日前から月経3日目ごろに起こる片頭痛は「月経時片頭痛」と呼ばれます。詳しくは片頭痛と女性ホルモン、女性頭痛外来もご覧ください。
治療の考え方
頭痛の種類や体の状態、ライフステージに合わせて、医師が次のような方法の組み合わせを検討します。
- 頭痛の治療薬:発作時の薬(トリプタン、ラスミジタンなど)や、抗CGRP抗体などの予防薬
- ホルモン療法:低用量ピルによる月経周期の調整(ピル外来)、更年期のホルモン補充療法(更年期障害の治療・診断、ホルモン補充療法について)
ホルモン療法の注意点
- 前兆のある片頭痛の方は、エストロゲンを含む低用量ピル(混合型)を使えません(禁忌)。前兆のない片頭痛に比べて、脳梗塞などの脳卒中が起こりやすくなるとの報告があるためです。前兆とは、頭痛の前に視界にギザギザした光(閃輝暗点)が見えるなどの症状です。この場合は、別の治療方法を検討します。
- 前兆のない片頭痛の方や、喫煙される方、40歳以上の方なども、ピルを使うかどうかは慎重に判断します(35歳以上で1日15本以上喫煙される方は使えません)。
- ピルやホルモン補充療法では、不正出血、吐き気、乳房の張りなどのほか、まれに血栓症が起こることがあります。
- 低用量ピルは、月経困難症などの治療では保険が使える場合がありますが、避妊目的などでは自費診療です。片頭痛そのものはピルの効能・効果に含まれていません。保険適用の可否は、診察時にご説明します。
妊娠中・授乳中の方へ
妊娠中・授乳中は、使える薬が限られます。抗CGRP抗体は、添付文書で妊婦には「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ」投与するとされ、妊娠中の安全性の情報は十分ではありません。日本頭痛学会の見解では、妊娠の可能性がある、妊娠を予定している、授乳を予定しているといった場合は、休薬を考慮するとされています。妊娠中の片頭痛治療薬、授乳中の片頭痛治療薬もご参照ください。
効果や副作用の出方には個人差があります。治療方法は、診察のうえで医師と相談しながら決めていきます。
受診 大濠パーククリニックの頭痛外来
当院の頭痛外来では、問診・診察で頭痛の種類を見きわめ、一人ひとりに合った治療を医師がご提案します。診療は保険診療が中心です。
- 女性頭痛外来:月経・妊娠中・授乳中・更年期など、女性ホルモンが関わる頭痛もご相談ください(詳しくは上の「女性頭痛外来」の項をご覧ください)。
- 即日CT:医師が必要と判断した場合、受診当日に頭部CT検査を受けられます。CT検査ではわずかながら放射線被ばくがあるため、検査の必要性を医師がご説明したうえで行います。
- 予約不要:公式LINEで順番待ちができます。
- アクセス:福岡市中央区大濠公園2-35 THE APARTMENT 2B。地下鉄空港線「大濠公園駅」下車、徒歩約2分です。天神・西新から地下鉄で約3分、博多から約9分です。
- 電話:092-724-5520
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療効果を保証するものではありません。効果や副作用の出方には個人差があります。
※薬の承認状況・保険適用は2026年10月時点で確認した情報です。今後変わる場合があります。
※治療薬の選択や使用の可否は、診察のうえで医師が判断します。自己判断での服用・中止はお控えください。