Q)ピル処方時、子宮や乳房など婦人科がんや腫瘍で処方ができない疾患は?

A)わが国のOCの添付文書上、(1)服用が、禁忌となる場合、(2)服用にあたり、慎重な判断を要する場合を以 下に列挙した(一部抜粋)。

(1) 服用が禁忌となる場合

エストロゲン依存性腫瘍

・乳癌

・子宮体癌

・子宮筋腫*

*(学会註)OCが子宮筋腫を増悪させるというエビデンスはなく、WHOのガイドラインでも禁忌とは されていない。ここでは、有症状で治療を必要とされる子宮筋腫とするのが妥当であろう。

・子宮頸癌およびその疑いのある患者 [腫瘍の悪化あるいは顕性化を促すことがある。]

とある。

(2)服用にあたり、慎重な判断を要する場合

・乳癌の家族歴又は乳房に結節のある女性

[エストロゲン投与と乳癌発生との因果関係についてその関連性を示唆する報告もあるので、定期的に乳房検診を行うなど慎重に投与すること。]

    平成17年版の日本産科婦人科学会編ガイドライン(改訂版)は、日本産科婦人科学会編「低用量経口ピルの使用に関するガイドライン」(診断 と治療社、1999)、世界保健機関(WHO)発行のOCの医学的適用基準74) ならびに英国の家族計画および生殖に 関する健康管理部門(FFPRHC)の作成したガイドラインを参考に作成された。

    WHOのOC使用に関する医学的適用基準では,OC が処方でき る分類1(使用制限なし)と分類2(リスクを上回る利益),

OC 処方が できない分類3(利益を上回るリスク)と分類4(容認できない健康上 のリスク)に大別されている。

☆なお、子宮筋腫は記載がない→使用制限なしと考えられる。

分類 1(使用制限なし):処方できる

・子宮内膜症、良性の卵巣腫瘍、重度の月経困難症

・乳房疾患-良性の乳房疾患または乳癌の家族歴 

・子宮体癌または卵巣癌

分類2(リスクを上回る利益):処方できる

・CIN および子宮頸癌 

・乳房疾患-診断未確定の乳房腫瘤

☆即ち、婦人科癌や子宮筋腫は OC 禁忌にならない。

分類 3(利益を上回るリスク)-処方できない

・乳房疾患-乳癌の既往歴があって3年間再発がない

分類 4(容認できない健康上のリスク)-処方できない

・乳房疾患-乳癌患者

     まとめると、日本では、乳がん、子宮体癌、子宮頸癌、子宮頸部異形成、子宮筋腫は禁忌。乳房腫瘍は慎重な判断を有する。

卵巣癌は記載なし。

    一方、WHOは、乳がんだけ禁忌。子宮頸癌、子宮頸部異形成は慎重投与(リスクを上回る利益時のみ処方できる)。

子宮体癌、卵巣癌、子宮筋腫、乳房腫瘤、良性卵巣腫瘍は処方可能。

と異なる。