予防薬(頭痛)
●予防薬
月2日以上の片頭痛で生活に支障が生ずる場合、あるいは月10回以上鎮痛薬やトリプタン製剤等を使用している方(薬物乱用頭痛*)は、予防薬を使い、片頭痛の回数を減らします。予防薬は片頭痛患者の脳過敏状態(脳過敏症候群**)を正常の状態に戻します。
一般的に目や耳から脳に入る各種刺激はある程度は制限されていますが、片頭痛患者では痛み(頭痛)に対する閾値(感じやすさ)が下がっており、軽い痛みでも頭痛として感じます。抗てんかん薬などは脳の感受性の閾値を上昇させ、痛み(頭痛)を感じにくくします。
●薬物乱用頭痛
片頭痛(一部の筋緊張型頭痛)の患者さんは痛みで日常生活に支障をきたすため、痛みから逃れるため早めに薬物を服薬したり、服用量が増えます。
一日10錠以上服用する場合もあります。特に鎮痛剤の使い過ぎは肝機能障害や腎機能障害をきたしたり、薬が効かなくなります(耐性ができる)。
薬物乱用頭痛(MOH)の診断基準
A.頭痛は1ヵ月に15日以上存在し,CおよびDを満たす
B.薬物を3ヵ月を超えて定期的に乱用している
C.1 ヵ月に10 日以上トリプタンや15日以上鎮痛剤を服用している
脳過敏症候群:(Cephalic hypersensitivity syndrome;CHS)」東京女子医科大学の清水俊彦先生らにより提唱されています。
目や耳から脳に入る各種刺激は、一般にはある程度までは制限されています。しかし片頭痛の方は痛みに対する閾値が低く、痛み刺激に非常に敏感です。
この状態を脳過敏症候群と呼び、頭鳴(頭の中ががんがんする)、頭重感、不眠、不安の増強、めまい、耳鳴り等で日常生活に支障がきたします。
薬物乱用頭痛、過敏例(光、音、におい)、前兆のある片頭痛患者に起こりやすく、40-50歳代にピークがあります。
●片頭痛の予防薬とその作用機序
月に2回以上の片頭痛がある方は、以下の予防薬を3ヶ月程度使うことで頭痛の回数を減らすことができます。
①抗てんかん薬
通常、細胞内はマイナスの電荷を帯びています。ここに神経興奮のシグナルが来ると、Na+が細胞内へ流入し、細胞内はプラスの電荷へと転換します(脱分極)。一方、抑制性のシグナルのCl-の流入によってなかなか脱分極が起こらず、神経興奮が起こりにくくなります。頭痛がおきにくくなります。
また、片頭痛の前兆である閃輝暗点を脳細胞の安定化をはかる作用で減少させます。
②アミトリプチリン
5-HT2受容体遮断作用と、ノルアドレナリンとセロトニンの取りこみを阻害します。
③β遮断薬
β‐アドレナリン受容体を遮断して、血管拡張を阻害したり、セロトニン放出抑制することで効果を発すると考えられています。
④Ca拮抗薬
血管の平滑筋にあるカルシウムチャネルの機能を拮抗(阻害)し、血管収縮抑制したり、5-HT2受容体遮断作用によりセロトニンの異常放出を抑制します。
⑤選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
セロトニンの再取り込みを選択的に阻害します。
⑥抗セロトニン薬
セロトニン(5-HT2)受容体を阻害し、セロトニン放出を抑え、血管の拡張を抑えます。
⑦アンギオテンシン変換酵素( ACE )阻害薬,アンギオテンシンⅡ受容体遮断薬( ARB )
脳血管に生じるNO(一酸化窒素)の合成阻害作用が考えられる。
⑧ロイコトリエン受容体阻害薬
妊婦にも使用するのは、β遮断薬
授乳時に使用するのは、β遮断薬(及び 抗てんかん薬
約1ヶ月位で効果が出始めます。効果がない場合は増量するか、他剤を併用するか、変更します。服用期間の目安は3~6ヵ月です。
長期に服用しても安全性の高い薬です。 頭痛の頻度(回数)や強さを減らします。
そのほかの予防方法
ビタミンB2やマグネシウムを予防効果があるといわれています。