芥川龍之介と閃輝暗点、片頭痛

芥川龍之介の作品『歯車』に彼が前兆のある片頭痛を患っていたことを思わせる文書がある。

前兆の一つ閃輝暗点の描写だ。頭痛が始まる60分以内にみられる。片頭痛患者の2~3割にみられる。心筋梗塞などの血栓症のリスクが高いと言われている。予防薬を使うなどしてリスクを下げる試みがなされている。

僕の視野のうちに妙なものを見つけ出した。妙なものを?——と云ふのは絶えずまはつてゐる半透明の歯車だつた。僕はかう云ふ経験を前にも何度か持ち合せてゐた。歯車は次第に数を殖(ふ)やし、半ば僕の視野を塞(ふさ)いでしまふ、が、それも長いことではない、暫らくの後には消え失(う)せる代りに今度は頭痛を感じはじめる、——それはいつも同じことだつた。」

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