大濠パーククリニック監修

片頭痛

  • 疫学

    日本では成人の8.4%(女性の13%、男性は3%)、約840万人が片頭痛にかかっていると報告されています。10代(女性は初潮後、男性は5歳くらいから)から始まり、20歳までに1/3は治癒します。女性は閉経後減少します。

  • 症状

    片頭痛発作は誘発因子をきっかけに通常4~72時間続き、片側の拍動性頭痛が特徴です。しかい、非拍動性の片頭痛、両側性(60%)の片頭痛もあります。頭痛のために日常生活に支障をきたします。また、日常的な動作(歩行や階段の昇降など)によって頭痛が増強することも特徴です。吐き気や嘔吐を伴うことが多く、頭痛発作中は感覚過敏となって、ふだんは気にならないような光、音、臭いを不快と感じる方が多いようです。

  • メカニズム

    なぜ片頭痛が起こるかはいまだに十分わかっていません。しかし、片頭痛はセロトニンが関与し、頭蓋内外の血管が過度に拡張する事が原因で起こると考えられています。現在、片頭痛発生には主に血管(セロトニン)説と三叉神経血管説との2つの説が有力です。

    1.血管(セロトニン)説
    ①ストレスや飲酒、過労、睡眠不足など、頭痛の原因として挙げられる外的要因(刺激)が誘因となって、頭の血管が膨張します。
    ②次にこれを鎮めようと、「セロトニン」という化学物質が多量に放出され、セロトニンの作用で頭の血管が収縮します。
    ③頭の血管が収縮したあと、セロトニンは急激に減少して、再度頭の血管が拡張します。
    ④これにより、血管透過性が亢進し、血液の成分がしみ出して、血管壁に炎症・浮腫炎症が起こります。
    ⑤この炎症は刺激となって、血管のまわりをとりまく三叉神経を通って脳に伝わり「痛み」として認識されます。
    ⑥さらに神経からも痛みを起こす炎症性物質である「痛み物質」がたくさん出され、ますます痛みは増強されます。 さらに最近有力なのは三叉神経血管説です。

    2.三叉神経血管説
    ①不明の刺激により三叉神経の末端が刺激されます。
    ②サブタンスPやカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)などの 血管作動性物質が放出されます。
    ③次いで硬膜や脳表血管の拡張し、 無菌性の炎症(神経原性炎症)が引き起こされます。
    ④この刺激による興奮が脳に伝えられて 悪心・嘔吐などの反応や頭痛を起こします。

  • 誘発因子

    片頭痛患者の3/4に何らかの発作の誘発因子があるといわれています。ストレス、睡眠不足、空腹、生理、カフェインの過剰摂取などが頭痛を誘発します。

    ①[精神的因子]60~80%.ストレスから開放されたときに血管も緩み、片頭痛が起こるストレス、精神的緊張、疲れ(頻回の旅行)、睡眠不足、睡眠過多(週末頭痛)
    ②[ホルモン因子]月経の2日前から3日目くらいまで、排卵日前後、閉経前後
    ③[環境因子]天候の変化なども影響します。(雨の前日、または当日)
    ※スマートホンやタブレット 用アプリ『頭痛~る』で本日や数日後の天気と気圧を見ることができます。台風時(2015年8月25日)は971hPa、頭痛が起こっても不思議でないです。このアプリは3時間ごとの天気と気圧を1週間ごとまで見れます。また地域ごとに変化しております。

    通常
    頭痛~る サムネ1

    台風
    頭痛~る サムネ2

    雨の日の前等低気圧状態を予想し片頭痛治療薬トリプタンの使用のタイミングを計るのも有効で、
    その際役に立つのが無料のアプリケーションの『頭痛~る』です。
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    ④[身体,情動]激しい運動・前屈(庭仕事など) ・重労働・睡眠不足(30%)、睡眠過多(25%)・空腹・長時間のPC,TV
    ⑤[疾病]歯痛,他の頭痛,頸部痛 ・高血圧 ・うつ病
    ⑥[遺伝的・素因的な要素]母親だけ片頭痛→子供は70%、 父親だけ片頭痛→子供は30%、両親頭痛→子供は90%
    ⑦[食事性因子]赤ワイン、チョコレート、カフェイン(コーヒー)、サラミ、ソーセージ年代物のチーズ、ソラマメ、柑橘類、グルタミン酸ナトリウム(多く含む中華料理)

    ※カフェインが100mg/日を超えると片頭痛発生のリスクが高まります。また、カフェインは100mg/日で頭痛の誘引になるといわれ、コーヒーは一杯につきカフェイン100mgを含むため、控えるか紅茶(カフェイン40mg程度)やお茶への変更をお薦めします。カフェインが片頭痛の誘因になることがあります。200mg/日以上なら要注意です。

    主な飲み物のカフェイン含有量のグラフはこちら(PDFファイルで開きます)

    ⑧[薬]ピル、睡眠導入剤、ニトログリセリン(狭心症)、シルデナフィル(バイアグラ)、ニフェジピン、アテノロール、カプトリル、シロスタゾール、鎮痛薬(インドメタシン,ジクロフェナック)、シメチジン、抗生物質

  • 予兆と前兆、アロディニアについて

    【予兆】片頭痛患者の50%に見られます。
    片頭痛が起こる数時間から、1~2日前に、何となく頭痛が起こりそうな気配を感じることもあります。漠然とした症状が多く、『予兆』と呼ばれ以下のような症状がでます。予兆を感じる片頭痛患者は、5人に1人だといわれています。

    ・食欲亢進
    ・首や肩がこる(緊張型と比較して突然起こり他の予兆を伴う点が異なります)
    ・生あくびが出る
    ・耳閉感
    ・軟便(下痢、腹痛)
    ・疲労感
    ・気分がよくない、落ち込む
    ・集中できない
    ・イライラする
    ・情緒不安定
    ・食欲増進(甘いものを無性に食べたくなる)
    ・体がむくむ
    ・眠気を感じる

    【前兆】片頭痛患者の20%に見られます。
    頭痛が起こる前に、30-60分前に閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれる、ギザギザした光が見える足り、視野の一部が欠けたりする片頭痛に特徴的な症状と言えます。

    ①閃輝暗転(突然、チラチラする光が見えて半円状にジグザグに広がってきて、元のところは見えなくなる(暗点)現象を閃輝暗点と言います。、後頭葉(こうとうよう)の視中枢につながっている血管がなんらかの原因で、収縮し脳虚血状態となり起こると。20才前後では片頭痛の発作の前(15-30分前)に起こることが多い。まれに55才前後で一般的に中性脂肪が非常に多い方などに起こることもあるのですが、脳梗塞、脳動静脈奇形、脳腫瘍などの可能性もありますのでCT等での検査が必要です。片頭痛の約20%に見られる。発生機序として、セロトニンが大量に放出され、脳の血管が収縮した段階で「見る」という感覚が生じる大脳の後頭葉を含めた脳の血流量が著しく低下し、神経の細胞が興奮するために生じる。)
    ②感覚性(チクチク感、感覚鈍麻)
    ③片麻痺
    ④脳底型(めまい、耳鳴り、難聴)

    最近、片頭痛の方は将来脳梗塞になる確率が高くなる、耳鳴りやめまいを伴う脳過敏症候群になりやすくなるという発表もあることから予防薬を使い頭痛の回数を減らすことや頭痛を我慢せず、トリプタンを主体として疼痛を管理することが望まれます。

    【アロディニア】片頭痛患者の60~80%に現れます。
    アロディニア(異痛症)とは片頭痛等の発作の初期に感じる異常感覚です。頭皮や顔面などに生じる違和感(頭部アロディニア)と手足のしびれ等(頭蓋外アロディニア)があります。日本人の片頭痛、群発頭痛患者の60~80%に発現します。発症5年以上立たないと出現しない事が多いようです。

    ①頭部アロディニア

    ・頭皮が痛い
    ・目の周りが痛む
    ・痛い側が枕に当たると痛みが強くなる
    ・ブラシやくしで髪をとかすと痛い
    ・髪の毛を束ねる時に痛みを感じる
    ・メガネやイヤリングが痛く感じる

    ②頭蓋外アロディニア

    ・手足がしびれやピリビリする感じる
    ・布団や毛布が体に何かが当たると痛い。
    ・腕時計をはめると痛い
    ・ベルトでお腹が痛い

    片頭痛治療薬トリプタン服薬2時間後の頭痛消失率は、アロディニアがない患者では93%と高いのにくらべ、アロディニアのある患者では15%と低かった、という報告をBursteinらがしています。片頭痛発症20分以内にはアロディニアの出現はないとされているため、アロディニア存在を確認し、早期のトリプタン製剤を服用することが勧められます。

  • 治療

    鎮痛剤や片頭痛の特効薬のトリプタン製剤を使い、発作を鎮める急性期の治療とバルプロ酸などの予防薬を毎日服用し、発作を起こしにくくしたり、起こっても軽くする予防法があります。

    治療薬

    A)急性期治療(屯用)

    ①鎮痛剤投与 頭痛頻度が少ない(月に1-2回)なら有効です。
    各種頭痛に鎮痛剤を使われいますが、効果発現までの時間、持続時間、副作用、効果の強さなどを検討して使い分けます。片頭痛にはナイキサンが持続時間が長いためよく使われます。※緊張型頭痛には即効性があるブルフェンやボルタレンなどが使用されます。

    ②トリプタン製剤 頭痛頻度が多い場合や鎮痛剤が効かない場合、わが国では2000年から発売されているトリプタン製剤が有効です。
    形状は内服(錠剤及び水なしで飲める口腔内崩壊剤があり、30分~2時間で効き始めます)、点鼻薬(嘔気がひどい時、15分くらいで有効)、皮下注射(5分で効きます)。

    ③頭痛発現後早期のトリプタン服用は有効で、服用のタイミングが重要です。痛みを感じてすぐの使用が有効です。

    ・スマトリプタン投与後の頭痛軽減率
     発現後 15分以内 69%
         30分以内 52%
         60分以内 27%

    ・なおナラトリプタン塩酸塩は薬が効きだすのに2~5時間かかります。
     ナラトリプタン塩酸塩゙投与後の頭痛改善率
     1時間  15.6%
     2時間  50.5%
     3時間  71.6%
     4時間  77.1%

    ④吐き気止め
    吐き気止めを片頭痛の治療として併用することがあります。考えられる効果は、

    1.せっかく使用した薬剤を吐き出すことを防ぐ。
    2.ドーパミン拮抗作用で頭痛発作を止める。
    3.片頭痛時、消化管の機能が低下することが多いので、胃の蠕動運動を高め薬剤の吸収を促進する。

    薬剤:メトクロプラミド、ドンペリドン
    使用時期:前兆時使用

    ⑤漢方薬の投与

    B)慢性期

    頭痛の頻度が多い場合や急性期(屯用)治療があまり効かない時、予防療法を併用します。1-2ヶ月で効果が出始め(頭痛の回数が減ったり、痛みが弱くなります)、3ヶ月程度使用します。

    ■予防薬の適応

    1.月に2回以上の片頭痛
    2.前兆のある片頭痛(頭痛の回数が少なくても)
    前兆がない片頭痛に比べ、後頭葉の易興奮性が相当高いため、まずトリプタン製剤が効きにくい例が多く、まず予防薬で興奮性を減弱させ、前兆を消し去ると、トリプタン製剤が良く効くようになる。 前兆がない状態から前兆がある状態に移行すると考えられている。
    3.過敏性を伴う片頭痛光過敏は後頭葉、音過敏は側頭葉、匂い過敏は前頭葉が過敏状態である。興奮状態が後頭葉から側頭葉や前頭葉まで波及するくらい強い興奮が起こっていると考え、予防薬で鎮めるべきである。
    4.起床時の頭痛 睡眠時にも脳過敏状態が続いて、片頭痛が重症化した兆候。

    ⑥予防薬投与

    1.抗てんかん薬(バルプロ酸ナトリウム等)
    通常、細胞内はマイナスの電荷を帯びています。ここに神経興奮のシグナルが来ると、Na+が細胞内へ流入し、細胞内はプラスの電荷へと転換します(脱分極)。一方、抑制性のシグナルのCl-の流入によってなかなか脱分極が起こらず、神経興奮が起こりにくくなります。頭痛がおきにくくなります。
    また、片頭痛の前兆である閃輝暗点を脳細胞の安定化をはかる作用で減少させます。

    ■予防薬の一つ 抗てんかん薬(バルプロ酸ナトリウム等)の作用機序

    バルプロ酸の作用機序として、

    1)GABAトランスアミナーゼを抑制
    2)コハク酸セミアルデヒドをコハク酸に代謝するコハク酸セミアルデヒド・デヒドロゲナーゼを抑制する

    以上の作用でGABA濃度を上昇させることでセロトニンの代謝を促進事が考えられています。

    バルプロ酸による片頭痛治療ガイドライン(暫定版)は日本頭痛学会により作成されたガイドライン。
    2011年発表より引用(一部改変)

    CQ.1: バルプロ酸は片頭痛の予防に有効か。片頭痛の予防薬としてバルプロ酸は国際的なコンセンサスがあるか。
    →月に2回以上の頭痛発作がある片頭痛患者にバルプロ酸を経口投与すると、1カ月あたりの発作回数を減少させることが期待できる。
    ※バルプロ酸は脳内でグルタミン酸脱炭酸酵素の活性化とGABAアミノ基転移酵素阻害によりGABAレベルを増加させ、神経細胞の興奮性を抑制することから
    CQ.2: バルプロ酸はどのような片頭痛患者に投与するのか
    →月に2回以上の頭痛発作がある片頭痛患者の頭痛発作を減少させることが期待できる。また薬物乱用時バルプロ酸予防療法を行うよう勧められる。
    ※バルプロ酸の予防療法の目的は
    1.発作頻度、重症度と頭痛持続時間の軽減
    2.急性期治療の反応改善
    3.生活機能向上と、生活への支障の軽減にある。
    CQ.3: 片頭痛治療に用いるバルプロ酸の用量はどの程度か。バルプロ酸投与時の注意点は何か。
    →片頭痛予防には成人の場合,バルプロ酸ナトリウム400~600mg/日の内服が勧められる。
    CQ.4 片頭痛治療におけるバルプロ酸血中濃度測定にはどのような意義があるのか
    →血中濃度は21-50μg/mlが至適と考えられ,血中濃度を50μg/ml以上に上げても効果は乏しいため。

    1.抗てんかん薬
    通常、細胞内はマイナスの電荷を帯びています。ここに神経興奮のシグナルが来ると、Na+が細胞内へ流入し、細胞内はプラスの電荷へと転換します(脱分極)。一方、抑制性のシグナルのCl-の流入によってなかなか脱分極が起こらず、神経興奮が起こりにくくなります。頭痛がおきにくくなります。
    また、片頭痛の前兆である閃輝暗点を脳細胞の安定化をはかる作用で減少させます。
    2.三環系抗うつ薬
    5-HT2受容体遮断作用と、ノルアドレナリンとセロトニンの取りこみを阻害します。
    3.β遮断薬(プロプラノロールなど)
    β‐アドレナリン受容体を遮断して、血管拡張を阻害したり、セロトニン放出抑制することで効果を発すると考えられています。
    4.Ca拮抗薬
    血管の平滑筋にあるカルシウムチャネルの機能を拮抗(阻害)し、血管収縮抑制したり、5-HT2受容体遮断作用によりセロトニンの異常放出を抑制します。
    5.選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)セロトニンの再取り込みを選択的に阻害します。
    6.抗セロトニン薬
    セロトニン(5-HT2)受容体を阻害し、セロトニン放出を抑え、血管の拡張を抑えます。
    7.アンギオテンシン変換酵素( ACE )阻害薬,アンギオテンシンⅡ受容体遮断薬( ARB )脳血管に生じるNO(一酸化窒素)の合成阻害作用が考えられる。
    8.ロイコトリエン受容体阻害薬

    ※外国の論文では
    Topiramate (5omg) >Propranolol(80mg)
    Topiramate (5omg) >Valproate(400mg) 2倍強い
    トビラマートなどの優位が目立っています。

    ⑦生活指導
    局所を冷やす、コメカミを押さえる。
    ※入浴、マッサージなど温めることはやめる。誘発因子を避ける(例えば夏場は外出時サングラスをする、カフェイン摂取を控える、睡眠時間など規則正しい生活を送る、朝食をとる等)。

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